コラムCOLUMN

新たな次元に入ったコンテンツ産業
Web3.0への架け橋となるNFTは波乱含みで成長

海外動向

清水 計宏

未来の兆しはいかがわしさが漂っている

 未来の兆しは、不良少年か不良少女、ときにヒッピーのような風体で現れることが多い。いかがわしい風貌をしていて、社会経験が豊富な年配者ほど、反発や抵抗を感じがちにもなる。決して、素直な優等生といった感じではないのだ。
 例えば、ビデオゲーム、eスポーツ、検索エンジン、音楽配信、動画共有、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、メタバース......。どれをとっても、その出始めは既存の法律との折り合いも悪く、不正が横行したり、違法性があったり、反道徳的であったりして、物議を醸し出してきた。そのうちに、しだいに折り合いをつけ、若者を中心にして、社会に定着してきた。
 2020年から2021年に米国を中心に急伸したNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)にも、危なっかしさがかなり残っている。だが、この数年間のうちに、メディアやコンテンツに破壊的な影響を与えるはずである。最近、国内でも盛り上がり、射幸心や投機心をあおっているNFTゲーム(ブロックチェーンゲーム)も、その代表的なトレンドのひとつである。

 なかでも「STEPN(ステップン)」=写真=は、歩いたり走ったりするだけで稼げる「Play to Earn/Move to Earn」の典型であり、国内でも夢中になる人が増えている。ウォーキングやジョギングすれば、歩数に応じて独自のトークン(暗号資産・仮想通貨)をもらえるゲームで、「歩くだけで稼げる」と遊技心を駆りたてている。STEPNは、オーストラリアのFind Satoshi Labが手がけるSolana(ソラナ)ブロックチェーン上に作成されたNFTゲーム。その仮想通貨(トークン)のSOL(ソル)で、NFTスニーカーを入手・実装して、移動するだけで、GST(Green Satoshi Token)やGMT(Green Metaverse Token)を入手することができる。プレイに必要なNFTスニーカーは高騰しており、日を追って敷居が高くなっている。

 現在、Bitcoin(ビットコイン)以外の仮想通貨として、Ethereum(イーサリアム)、Monacoin(モナコイン)、Litecoin(ライトコイン)、XRP(リップル)、Bitcoin Cash(ビットコインキャッシュ)をはじめ、世界で1500を超す種類が出回っており、いまも増え続けている。これらは、「Alternative Coin」(代替のコイン)と呼ばれ、一般には「アルトコイン」や「オルトコイン」と呼ばれている。
 アルトコインの中で、若き天才のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が2013年にリリースしたEthereum(ETH)は、スマートコントラクト(自動化された契約・取引)機能を搭載し、中央管理者のいない金融仲介アプリのDefi(Decentralized Finance:分散型金融)やNFTの分野で不可欠な通貨となっている。
 2022年上半期において、Ethereumを基盤に数多くのDapps(ダップス)が開発されており、次世代型のソフトウェアとして有望視されている。Dappsとは、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを利用することで実現できるアプリケーションのことだ。この主流であるEthereumを超えるかもしれないという前評判の高いアルトコイン銘柄がSolana(SOL)なのである。
 STEPNを開発・運営するFind Satoshi Labは、ジェリー・ホワン(Jerry Huang)とヨーン・ロン(Yawn Rong)の両氏によって、2021年夏に設立された。2021年12月にAndroid/iPhone向けのベータ版STEPNをリリースし、急激にユーザー数を伸ばしてきた。2022年5月6日現在、月間アクティブユーザー(MAU)は230万人、デイリーアクティブユーザー数(DAU)は53万3000人と50万人を突破した。これにより、Find Satoshi Labは、2022年第1四半期の利益は2681万5807ドルに達したと発表している。

NFTに潜むリスクと環境負荷の課題

 NFTゲームは、もちろんSTEPNだけではない。人気のタイルだけ挙げても、Splinterlands、Axie Infinity=写真=、Alien Worlds、Farmers World、Galaxy Blocks、Upland、SecondLive、CryptoBlades 、PlayMining、Sunflower Land、Arc8 by GAMEE 、Jelly Squishをはじめ数多くある。今後も世界で20億人がプレイしているとされるWeb2.0ゲームがWeb3.0に移行するなかで増え続けていくだろう。仮想通貨の最大手取引所であるFTXの米国事業体であるFTX USは、2022年2月に NFTに関連するゲーム特化部門「FTX Gaming」を立ち上げ、ゲームスタジオにトークンやNFTの発行、ウォレット導入、コンプライアンス、ライセンス、一次・二次取引などのソリューションを提供している。こうした動きが推進力となる。FTXは、個人投資家から機関投資家まで、幅広い顧客を対象に仮想通貨の取引プラットフォームを複数運営している。

 ただし、NFTゲームは揺籃期にあり、リリース前後にシャットダウンやキャンセルされて非難を浴びることや、物議を醸し出すことは珍しくない。このことは、肝に銘じておくべきだろう。
 戦術ビデオゲーム「Worms」シリーズで知られる英国のゲーム開発会社のTeam17は、2022年1月31日にWormsのコレクション可能なデジタルアート作品を制作し、NFTパートナーであるReality Gaming Groupを通じて販売すると発表した。しかし、このMetaWorms NFTプロジェクトはキャンセルされて、市場から強い反発を受けている。
 2022年3月には、北朝鮮と見られるハッカー集団(Lazarus Group)から、ベトナムのゲーム会社のSky Mavisによって開発されたサイドチェーン「Ronin Network」が大規模なサイバー攻撃を受けて、約6億ドル(約760億円)の仮想通貨が盗まれた。サイドチェーンとは、複数のブロックチェーン間で仮想通貨の取引を双方向で実行し、各種機能をブロックチェーンに追加する技術のことである。
 Ronin Networkは、流行しているNFTゲーム「Axie Infinity(アクシーインフィニティ)」を支えており、Sky MavisはEthereumの混雑を回避するために開発したネットワークである。Sky Mavisは、17万3600ETH(イーサ)と2550万ドル相当のUSD(米ドル)コインがRonin Networkから盗まれたこを公表しており、被害額は6億ドル超と評価された。
 また、中国のゲーム会社のAnimoca Brands(アニモカブランズ)は、2019年にEthereumベースのPCブラウザー向けのNFTゲーム「F1 Delta Time」をリリースした。しかし、フォーミュラ1(F1)の正式ライセンスの更新ができず、2022年3月16日に運営を終了してしまった。このゲームは、F1レースをゲームプレイに取り入れて、レースカーをNFTの形で売り出した。ゲーム人気が高まるにつれて、NFTレースカーの価格は上昇し、2020年にF1の70周年記念で制作されたNFTカーは26万5000ドルとなり、28万8000ドルで転売されたりされた。結局、一時的な熱狂で終わることになった。
 NFTゲームは、ブロックチェーンやメタバース、分散型台帳(分散型のデータベースを実現)、ときにAI(人工知能)といったテクノロジーを組み合わせて、ゲームの仕組みやエコシステムに多大な変化を起こしつつある。「Game(ゲーム)」と「Finance(金融)」を足した「GameFi」(ゲームファイ)という用語も生み出された。これはゲームをプレイすることでトークンや金銭を獲得できるNFTゲームの代名詞にもなっている。
 NFTそのものが、投機性を帯び、マネーロンダリングに使われたり、ハッキングや詐欺の対象にもなっており、不安定性は隠しきれない。しかし、NFT市場は2020年から2021年に実質的に離陸しており、リスクを織り込みながらも、経済性と市場拡大への期待は高まり続けている。リスクのないビジネスはなく、いかにリスクを分散、回避する仕組みをつくりながら、市場を広げていくかが、ここでも課題である。
 一方で、NFTを支えるブロックチェーンの維持には、大量のコンピューターを稼働させて、莫大な消費電力を必要とする。このため環境問題も取りざたされている。英ケンブリッジ大学の「Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index(CBECI)」(https://cbeci.org/)によれば、仮想通貨のBitcoinだけで年間140TWhの電力が消費されている。これはスウェーデン、マレーシアなどの年間電力消費量と同等レベルだという。
 こうした中で、世界第2位の取引量を誇るブロックチェーン・プラットフォームであるEthereumは、マシンパワーが必要な既存のProof of Work(PoW)からエネルギー消費を抑えながら安全性を確保する「Proof of Stake(PoS)」と呼ばれる分散型システムへの移行に向けて改修を進めている。PoSのマイニングは、PoWとシステム仕様が異なるため、PoSのアルゴリズムを導入している仮想通貨はまだ少ないものの、こうした流れが消費電力の減少への挑戦に広がりを与えると見られている。

不安定性を含みながら浮き沈みしながら成長

 米Nonfungible.comの調査によれば、2021年のNFTゲームの売上は51億7000万ドルとなった。同社が仏銀行L'Atelier BNP Paribasと共同で発表した NFT 全体の市場規模は2021年に176億ドルとなり、2020年の8200万ドルから200倍と爆発的な伸びとなった。
 NFT の保有・取引するデジタルウォレット数は250万超となり、2020年の8万9000ウォレットから急増した。これらのウォレットの全てが2020年に NFT の購入に参加していたと仮定すると、1年間の1ウォレット当たりの NFT 平均購入額は7040ドルだったことになる。NFT 購入者の実数は、2020年の7万5000人から、2021年に230万人に増加した。
 詐欺やハッキング、なりすましへの警戒もあり、2022年の市場はほぼ横ばいになるのではないかと見られてきたが、浮き沈みを繰り返しながら成長を続けている。
NFT市場規模については、調査会社によって微妙な違いがある。ブロックチェーン分析企業の米Chainalysis(チェイナリシス)は2022年5月に、2021年から2022年5月1日までNFTの取引を分析したレポートを発表しており、この中で成長は断続的であり、活動には大きな波があると指摘している。
 このレポートによると、NFT市場全体の取引量は、2022年1月からの4カ月間で370億ドルと、2021年1年間の総計400億ドルに迫る勢いだとしている。月ごとに見ると2022年2月中旬から取引活動が大幅に減少し、2月13日の1週間あたり39億ドルから、3月13日には9億6400万ドルに縮小するなど変動がある。同年4月中旬から回復基調となっているという。NFT市場への参加者数は継続して増加しており、2022年第1四半期には、前四半期から個別アドレスが32万3,000増加し、95万アドレスがNFTを売買しているとしている。
 米Technavioが2022年4月に発表したレポートでは、世界のNFT市場規模は2021年から2026年にかけて1472億4000万ドルへ増大し、年平均成長率(CAGR)は、35.27%になると予測している。
 さらに米Reportlinker.comが2022年5月に発表したレポートによれば、世界のエンドユーザーが売買するNFT市場に絞った予想では、2022年の30億ドルから2027年までに136億ドルへと成長し、2022年から2027年までのCAGRは35.0%になるとしている。
 NFTのマーケットプレイスは、海外のOpenSeaやRarible、Nifty Gateway、Blockchain Digital Copyright and Asset Trade、Huanheをはじめとするところだけでなく、国内でもCoincheck 、Adam by GMO、NFT Studio、LINE、nanakusaなど増え続けている。
 また、NFT市場を提供している主要ベンダーとして、Cloudflare(米国)、Gemini Trust(米国)、OpenSea(米国)、Semidot Infotech(米国)、Dapper Labs(カナダ)、The Sandbox(中国)、Axie Infinity(ベトナム)、Rarible(米国)、Art Blocks(米国)、Foundation(米国)、Superrare(米国) 、Mintbase(ポルトガル)、Larva Labs(米国)、Appdupe(インド)、CryptoKitties(カナダ)、Sorare(フランス)、Yellow Heart(米国)、Onchain Labs(中国)、Solanart(フランス)、Gala Games(米国)などと広がっている。

NFTは新たな経済的価値を生み出す

 科学技術とイノベーション(技術革新)は経済成長とともに社会の原動力である。地球環境への負荷を減らし、持続可能性を高めるためにも、フィジカル(物質的)だけでなく、バーチャル(仮想的)な経済活動を促すことが欠かせない。
 NFTは、未踏の問題とリスクを抱えながらも、市場において大きな経済的価値を生み出しているのは事実。企業にとっては、顧客との接点とエンゲージメント(深い関係性)を広げ、新たなストーリーをつくりだす機会にもなっている。
それだけに、マクドナルド(McDonald's)、ナイキ(Nike)、ウォルト・ディズニー(Walt Disney)、バーガーキング(Burger King)、米国郵政公社(USPS)、スターバックス(Starbucks)、インスタグラム(Instagram)、ツイッター(Twitter)、 バドワイザー(Budweiser)、タコベル(Taco Bell)、英国発の靴ブランドのジミーチュウ(Jimmy Choo)のほか、世界的なラグジュアリー・ファッションブランドのルイ・ヴィトン(LVMH)、グッチ(GUCCI)、バーバリー(Burberry)、フェンディ(FENDI)、ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)などがこぞって参入している。米国の女優・映画プロデューサーのリース・ウィザースプーン(Reese Witherspoon)や世界的に人気のラッパーのスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)もニュースを賑わしている。
 このうちツイッター(Twitter)は、2022年1月に月単位のサブスクリプションサービスであるTwitter Blueの加入者がプロフィールにNFT画像を使用できる機能を追加した。
 ディズニーに関連して、ディズニー・エンターテインメント傘下のマーベル・コミック(Marvel Comics)および持ち株会社であるマーベル・エンターテインメント(Marvel Entertainment)は、2021年8月にVeVe Digital Collectiblesプラットフォームで、5種類のスパイダーマングッズをNFTとしてリリース。VeVeは、Orbis Blockchain Technologiesが開発するiOS/Androidのアプリであり、その運営会社。このNFTの購入には仮想通貨は要らず、クレジットカードでGEM(ジェム)と呼ばれるアプリ内通貨を購入するだけでよく、慣れない人にも配慮している。
 米ダッパーラボ(Dapper Labs)は、2020年11月に米NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)選手の試合のハイライトシーンをNFTとして所有することができるNFTトレーディングカード「NBA Top Shot」で脚光を集めた。これは、カモン(Common)、レア(Rare)、レジェンド(Legendary)の3区分のビデオパッケージで、レジェンドに近づくほど希少性があり、価格が高くなる。また米NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)とも提携し、独自のブロックチェーンであるFlow(フロー)上で、デジタルビデオのハイライトシーンをNFTで発売した。

 なかでも話題性があるのは、ファーストフードレストランチェーンのマクドナルドの取り組みだ。フランスのマクドナルドは、2021年4月にビッグマック・チキンナゲット・フライドポテト・サンデーなどのデジタルアートNFTコレクション「McDoNFT(マクドNFT)」=写真(イメージ)=を発行している。2021年10月には中国のマクドナルドが、188個限定でNFT作品「Big Mac Rubik's Cube(ビッグマックルービックキューブ)」を発行。これは、中国市場参入31周年と上海に新たな本社ビルを開設したことを記念し、初のNFT発行を発表した。このサンドイッチの一つにちなんで名付けられたNFTは、従業員や消費者を対象にギフトという形で配布。ただし、中国でのNFT取引には、仮想通貨ではなく法定通貨の人民元が用いられる。プラットフォームもブロックチェーンではなく、データベースを利用しており、NFTの二次流通はできないのが現状。それだけに、デジタル人民元(DCEP:Digital Currency Electronic Payment)の発行に関心が集まっている。

NFTやメタバースはWeb3.0の架け橋に

 NFTアーティストについて、BEEPLE、Nyan Cat、Bored Ape Yacht Club:BAYC、CrypToadz、CryptoPunks、FEWOCiOUS、Jaden Stipe、Steve Aokiといった有名人ばかりでなく、かなりの勢いで増加している。
音楽分野では、2022年5月には音楽ストリーミングのスポティファイ(Spotify)は、米国のAndroidユーザーを対象に、プロフィールページで音楽アーティストがNFTを宣伝できる機能の試験導入を始めている。これは、アーティストとファンのつながりを深める取り組みの一環としている。

 ナイキは、仮想スニーカーのデザインを手がけるRTFKT Studios(アーティファクト・スタジオ)と共同で2022年4月23日に、NFTスニーカーコレクション「RTFKT x Nike Dunk Genesis CryptoKicks」=写真=をNFTマーケットプレイス のOpenSeaで発売し、仮想通貨の投資家らが高値で売買している。ナイキは、2021年12月にNFTスタートアップだったRTFKTを買収している。この企業は、ファッンション関係のNFTを手がけ、 2021年3月にNFTアーティストのFEWOCiOUS氏とコラボレーションして、そのアイテムが310万ドルという高額で取り引きされた。ナイキは、2019年にブロックチェーンへの取り組みに先手を打っており、スニーカーのトークン化の特許を取得している。

 スターバックス=写真=も2022年5月に、年内にNFTコレクションを作成して、オリジナルの体験、コミュニティの構築、ストーリーテリング、顧客エンゲージメントを高めていくことを発表している。スターバックスのモバイルアプリは、米国でApple Payに次ぐ利用者の多いモバイル決済アプリになっている。そのアクティブユーザー数は3000万人となっており、NFTの一般普及への起爆剤になることもありうる。ここでは、「スターバックスWeb3.0(ウェブスリー)デジタルコミュニティ」という言葉が使われているように、Web3.0(Web3)はNFTやブロックチェーンと深い関係がある。Web3.0は、ブロックチェーンを基盤とする次世代の分散型インターネット。特定の管理者・監視者はおらず、システムが自律的に稼働し、ネットワーク上で分散管理する。個人情報の登録は基本的に不要となり、個人データの管理はユーザーの手元に取り戻すことができる。データの改ざんが困難となり、個人情報の漏洩リスクを減少し、セキュリティも向上する。システムはプログラミングされたとおりに動くことになり、プログラミングを変更しない限り、サービスが途絶えることがない。ただし、Web3.0のサービスを利用するにあたって難易度が高く、手数料が高くなりがちになり、全てが自己責任になる可能性が高い。法律的な整備も進んでいない。

 とはいえ、メディア環境や各種サービスは、「分散化」「オンデマンド化」「パーソナライズ」が進んでおり、とりわけ分散化は、民主化と持続可能性の観点からも止められない流れになっている。メタバースやNFTは、Web3.0への架け橋になる。

米NetgearのデジタルフレームでNFTアートの鑑賞が可能に

 2022年は、NFTがしだいに一般の人にも身近になる年になると見られている。韓国サムスン電子は、NFTプラットフォーム付きのスマートテレビとして、「MICRO LED」=写真=、「Neo QLED」、「The Frame」の最新モデルの市場投入をすることになっていたりするからだ。それに先駆けてサムスンは、NFTアートマーケットプレイスのNifty Gateway(ニフティーゲートウェイ)と2022年3月に提携した。このマーケットプレイスは、ウィンクルボス(Winklevoss)兄弟(アーミー・ハマー、ジョシュ・ペンス)が運営する仮想通貨取引所であるGemini(ジェミニ)の子会社。これまでに、デジタルアーティストのパク(Pak)氏やヒップホップMC(Microphone Controller)でエミネム(Eminem)として知られるマーシャル・ブルース・マザーズ3世の作品のほか、DJのカルヴィン・ハリス(Calvin Harris)、ミック・ジャガー(Mick Jagger)、パリス・ヒルトン(Paris Hilton)らのNFTを販売したことで知られる。

 NFTに対応するデバイスとして、コンピューターネットワーク機器などのハードウェアを製造販売している米Netgear(ネットギア)のスマートアートキャンバス「Meural(ミューラル)」がある。最新のデジタルフレーム「Meural Canvas II」=写真=では、NFTアートが表示できるようになっている。NFTを検索し、その結果も表示できる。これは、プログラム可能なNFTアートを表示し、自動的に表示を更新する機能(非同期アート互換性)がある。室内での蛍光灯の反射などの光沢を抑えるアンチグレア(AG)マットスクリーンを採用し、作品をリアルに楽しむことができる。27インチと21インチの両モデルがある。 MeuralでNFTの表示ができるようにするため、Netgear はEthereum系ブロックチェーンの通貨やNFTを一括で補完・管理できるソフトウェアウォレットのMetaMask(ConsenSysが運営)と提携しており、これらの仮想通貨ウォレットを Meural に連携させた。

 Meural のユーザー(所有者)は、Meural の Web プラットフォームから直接 MetaMask の仮想通貨ウォレットに接続する機能を使うことができるようになった。ウォレットに接続し、壁に表示したい NFT を選択すると、検証可能な QR コードと関連するメタデータとともに、プラットフォームにシームレスにアップロードされる仕組みだ。
 Meural Canvas IIは、約100点のサンプル画像のほか、自分の家族やペットの写真などを表示できる。有料のメンバーシップ加入により、世界中の美術館やギャラリーから集められた3万点以上のアートライブラリーを楽しむことができる。
 ここで、改めて認識しておくべきことは、NFTの購入者が所有できるのは、著作権ではなく、ブロックチェーン上のユニークなハッシュとトランザクション記録、作品ファイルへのハイパーリンクだけだということである。もし、トークンの鋳造(Minting)に際して身元を偽っていたりすれば、不正の温床となりうる。NFT市場に特化した法的枠組みはなく、他のテクノロジーと同様に、最初のうちは先走った行為や扇動に巻き込まれがちになる。
 しかし、これまでコピーや複製に阻まれていたデジタルコンテンツやデジタルアセット(資産)が、商品として売買できるようになったことは、とても画期的なことであり、紆余曲折はあっても、成長軌道に乗せていくことが求められている。
 デジタルコンテンツ産業は新たな次元に入っている。果たして、だれ(どこ)が勝者になるのだろうか?

<つづく>

 (清水メディア戦略研究所 代表)